くさび足場(ビケ足場)

住宅の外壁塗装でよく見かける足場は、たいていこれです。ハンマー1本で組めて早い。そのかわり、くさびの打ち込みが甘いと、手すりや床ごと外れます。

支柱 くさび 緊結部(ポケット) 手すり・布材
くさび足場の緊結部。① 手すりの端を支柱のポケットに上から差し込む ② くさびを上からハンマーで打ち込む。

くさび足場とは

支柱に一定の間隔で付いている緊結部(ポケット)に、手すりや布材の端のくさびを上から打ち込んで組む足場です。ボルトもクランプも使わず、ハンマー1本で組み立てられます。正式にはくさび緊結式足場、現場では「ビケ足場」と呼ばれることが多い足場です。

部材が軽く、建物の形に合わせて段差や出っ張りにも対応しやすいので、戸建て住宅、アパート、改修工事など、低層から中層の現場で広く使われています。高さは一般に31m未満で使われ、ビル工事用の機材なら補強などの条件つきで45mまで組めます。

部材と役割

部材役割
支柱(建地)一定間隔にポケットが付いた鋼管。上下に継いで高さを伸ばす
手すり・布材支柱どうしを横につなぐ。端のくさびをポケットに打ち込む
床付き布枠(踏板)作業床。つかみ金具で布材に掛け、外れ止めをロックする
ブラケット(腕木)建物側に張り出し、作業床を足して建物との間をふさぐ
ジャッキベース一番下で高さを調整する。敷板の上に置いて釘で止める
筋かい・根がらみ足場のゆがみや、脚元の開きを防ぐ
壁つなぎ足場と建物をつなぎ、倒れないようにする
先行手すり上の層に上がる前に、先に取り付けておく手すり

組立ての手順

  1. 地盤と敷板地盤を締め固めて、敷板を敷く。ジャッキベースは敷板に釘で止める。脚元が沈むと、足場全体が傾く
  2. 1層目を組む支柱を立てて布材と根がらみでつなぎ、ジャッキで水平を出す。最初の1層の精度が、上までそのまま出る
  3. 作業床と手すり床付き布枠をすき間なく掛けて外れ止めをロックし、手すり・中さん・幅木を付ける
  4. 上の層へ先行手すりを付けてから上の層に上がり、同じ順で組む(手すり先行工法)
  5. 壁つなぎと筋かい高さが上がるのに合わせて、壁つなぎと筋かいを取っていく。最上層まで組んでからまとめて取るのは危ない
  6. 昇降設備と養生階段やはしごを付け、メッシュシートを張る

組立て・解体のときの決まり

高さ2m以上の足場(つり足場・張出し足場を含む)の組立て・解体・変更では、次のことが決められています。

  • 作業する区域に、関係者以外を入れない
  • 強風・大雨・大雪などで危ないときは、作業を中止する
  • 材料や工具の上げ下ろしは、つり綱やつり袋を使う
  • 部材の緊結・取外し・受渡しは、幅40cm以上の作業床の上で行い、フルハーネスを掛ける

「悪天候」の目安は、厚生労働省の通達で次のように示されています。

悪天候の目安基準
強風10分間の平均風速が10m/s以上
大雨1回の降雨量が50mm以上
大雪1回の降雪量が25cm以上
中震以上の地震震度4以上

設置基準

作業床の幅40cm以上
床材のすき間3cm以下
床材と建地のすき間12cm未満(超えるときは補助板などでふさぐ)
手すり高さ85cm以上+中さん(高さ35〜50cm)
幅木(物の落下防止)10cm以上
最大積載荷重決めて、見やすい所に表示する
一側足場幅1m以上とれる場所では使えない。本足場(建地2列)が原則

点検のポイント

点検には2種類あります。

いつ何をする
毎日、作業を始める前手すり・中さん・幅木などが外れていないか、脱落していないか。見つけたらすぐ直す
強風・大雨・大雪・中震以上の地震のあと/組立て・一部解体・変更のあと足場全体を点検し、結果を記録して、工事が終わるまで保存する

どちらの点検も、点検する人をあらかじめ指名しておく決まりです(2023年10月から)。指名は書面のほか、朝礼で口頭で伝える方法でもかまいません。点検したあとは、点検した人の名前も記録に残します。

くさび足場で見るところ

  • 布材・腕木のくさびが、ポケットに確実に打ち込まれているか
  • 支柱の継ぎ目が、抜け止めピンなどで確実につながっているか
  • 床付き布枠の外れ止めがロックされているか。建地との間にすき間がないか
  • 手すり85cm以上・中さん35〜50cmが付いているか。妻面(足場の端)にもあるか
  • 幅木・メッシュシートが外されていないか。メッシュシートは全部のはと目で留まっているか
  • ジャッキベースや敷板が沈んだり、ずれたりしていないか
  • 壁つなぎ・筋かいが外されていないか
  • 部材に曲がりや傷みがないか

解体のときの注意

  • 上から順に、組立ての逆:最上層から1層ずつ外す。下の層を先に外さない
  • 手すりは最後まで残す:先行手すりを残したまま、その層の部材を外し、下の層に移る
  • 壁つなぎは外す高さに合わせて:先に下までまとめて外すと、解体中の足場が倒れやすくなる
  • 投げ下ろさない:外した部材は、つり綱やつり袋、荷揚げ機で下ろす
  • 下は立入禁止:解体している範囲の下に、人を入れない

よくある災害と対策

国の分析では、足場から墜落した490件のうち、組立て・解体中が120件、そのうち90件は最上層からの墜落でした。墜落の約9割は、決められた手すりやフルハーネスが無いか、不十分な状態で起きています。

組立て・解体中に、最上層から落ちる

まだ手すりのない最上層で、部材を受け渡したり、くさびを打ったりしているときに起きる。

対策先行手すりを付けてから上がる。親綱を張ってフルハーネスを掛ける。

外した手すりを戻さず、そこから落ちる

資材を入れるため、作業しやすくするために手すりを外し、そのまま次の作業に入ってしまう。国の分析でも多く見られた型。

対策外したら、終わった時点ですぐ戻す。毎朝の点検で、手すりの外しっぱなしを必ず見る。

くさびの打ち込み不足で、手すりや床が外れる

差し込んだだけで打っていないくさびは、手で引くだけで抜ける。寄りかかった瞬間に手すりが外れる。

対策打ち込みを1本ずつ確かめる。組み終わりに、手で揺すって確認する。

試験とのつながり

出典:労働安全衛生規則 第561条の2・第562条・第563条・第564条・第567条・第568条、厚生労働省「足場等関係の改正」、厚生労働省「足場からの墜落防止措置が強化されます」、厚生労働省「足場等の種類別点検チェックリスト」、厚生労働省 委託事業「足場からの墜落・転落災害防止」技術資料(手すり先行工法)、厚生労働省「足場からの墜落防止措置の効果の分析」、仮設工業会「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準」。 数値は2026年10月時点で確認しています。